前集103 功名富貴からの束縛から自由になり、自分の本心を見直す

前集101-120

起 原文

以幻迹言 無論㓛名冨貴 即肢體亦属委形
以真境言 無論父母兄弟 即萬物皆吾一體
人能看得破 認得真 纔可任天下之負担 亦可脱世間之韁銷

幻迹を以て言えば、功名富貴を論ずるなく、即ち肢体もまた委形に属す
真境を以て言えば、父母兄弟を論ずるなく、即ち万物皆吾が一体なり
人よく看得て破り、認得して真ならば、わずかに天下の負担に任うべく、また世間の韁銷を脱すべし

幻迹(げんせき)、夢幻のごとく現れた仮の姿;委形、荘子の「我が身は天地の委形」から出た言葉で、天地から委託された仮の姿(形がどんなものであれ);真境、本真の実態;韁銷(きょうさ)、韁は馬を制御する手綱、銷はくさり、すなわち世間からのしがらみ

承 意訳

夢幻のごとく現れた仮の世界では、名誉や財産を成すことを議論することは意味がありません。つまり肉体は天からの借り物に過ぎません。

本真の実態である実在の世界では、血縁関係のある父母兄弟は勿論のこと、万物は皆、自分と一体で同じです。

人は世間のものが全て同じ根源から生じていることを悟り確信したら、天下国家の大役を担えることができ、俗世間のしがらみを超越することができます。

転 別視点

映画「マトリックス」を思い出します。現実の世界では脳に電極のようなものを差し込み、虚空の世界で作り出された敵と戦います。

虚空の世界とまでは行かなくても、世界の中での自分の立ち位置をよく理解して、自分がどのような道を歩むべきかをよく考えてから行動しなさいと諭されている感覚です。

一時的な名誉や富を成すことよりは、もっと根源に立ち戻って自分の実現したいことに集中しましょう。

結 まとめ

名誉や富はこの世の中の表面的なものに過ぎず、人間の本真とはかけ離れた価値観です。名誉や富への拘りを捨て去って、人間はどうあるべきかを考えるに至って初めて世間からのしがらみから自由になり、人々の指導者となり得ます。

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