前集078 貪らざるを以て宝と為す

前集061-080

起 原文

人只一念貪私 便銷剛為柔 塞智為昏 變恩為惨 染潔為汚 壊了一生人品
故古人以不貪為寶 所以度越一世

人は只一念貪私なれば、すなわち剛を銷して柔と為し、智を塞ぎて昏と為し、恩を変じて惨と為し、潔を染めて汚と為し、一生の人品を壊了す
故に古人は貪らざるを以て宝と為す、一世に度越する所以なり

銷して、消して;昏、暗いこと、昏愚;壊了(かいれい)、破壊すること;度越(どえつ)、度を越えて優れていること;古人=宋の国の子罕という宰相

承 意訳

人においては只だ少しでも貪欲利己の念が起きたときは、すなわち剛毅の気性は忽ち柔弱となり、明智も塞がって昏愚となり、恩恵を施す仁の心も残酷な心と変わり、潔白な心も汚れてしまい、終には一生涯の人格品性も全く破壊されてしまいます

それ故、古人(子罕)は「貪らないことを以て、自分の宝とした」を信条としました。そのためにこの古人は一世に卓越して、尊敬を集める存在になりました

転 別視点

人に於いて徳とされるものにはいろいろとありますが、どんなに立派な徳でさえも貪欲な一面が入り込むと全てが地に堕ちます。

その対策としては、徳を積むことに励むよりは、貪欲にならないように注意することをモットーにする方が良いという考え方があります。一見消極的な発想に見えますが、それが一番良い道「急がば回れ」という発想です。欲の道に迷いこまなければ、いつかは必ず正しい道を歩むことになります。

結 まとめ

どんなに立派な徳でさえも貪欲な一面が入り込むと全てが地に堕ちます。だからこそ、貪らざるを以て宝となす姿勢が最も道に近いと言えます。

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