前集068 天運が来れば受け入れ、平穏無事なときでも危機への備えを怠らない

前集061-080

起 原文

天之機緘不測
抑而伸 伸而抑
皆是播弄英雄 顛倒豪傑處
君子只是逆来順受 居安思危
天亦無所用其伎倆矣

天の機緘は測られず
抑えて伸べ、伸べて抑ふ
皆是れ英雄を播弄し、豪傑を顛倒する処なり
君子はただ是れ逆に来るを順に受け、安きに居て危きを思ふ
天もまたその伎倆を用いる所なり

機緘(きかん)、機は機械、緘は封ずること;播弄(はろう)、「播」は広く行き渡らせる、「弄」は手にとっていじくること;顛倒、逆行する;伎倆(技量、ぎりょう)、物事を行う、特別なうまさや力

承 意訳

天地自然の意図「機緘」は実に神変不可思議で推測することはできません

人に一生について、ある時は悲境に抑えつけて、ある時は得意の境地に伸ばし、逆に伸ばしたかと思えば抑えつけたりと

この機緘は英雄を弄び、豪傑を顛倒しておもちゃのように扱います

ただ君子のような自分の立場を知るものは野心や功名心がないために、天運が来れば受け入れ、平穏無事なときでも危機への備えを怠りません

天地自然もその力を施す余地はありません

転 別視点

人生を変化させる要素は多種多彩で小さなものから大きなものまでいろいろあります。隣に座っている人の小さな一言が自分の人生を大きく変えることがあれば、大震災のように多くの人の人生を強制的に変化させることもあります。

そうなるとどのような環境においてもぶれない人生を歩むほうが良いのではないでしょうか。ぶれないだけではなく、自分が楽しく、周囲が幸せになると更に良いです。

洪自誠さんが何度も主張している君子のような生き方の一つは、私利私欲に囚われない、謙虚な考え方が自分および周囲に人の幸福をもたらします。日々与えられた環境の中で自分の信念に沿って生きていれば、天運がどうなろうと幸せを感じることができます。考え方一つで幸せを感じることができる発想で、まさに「幸せメガネ」ですね。

結 まとめ

周囲の環境がどのように変化したとしても、君子のように野心や功名心を持たず、天運が来れば受け入れ、平穏無事なときでも危機への備えを怠らないようにします。

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