起 原文
真亷無亷名
立名者正所以為貧
大巧無巧術
用術者乃所以為拙
真廉は廉名無し、名を立つる者は、正に貧と為す所以なり
大功は功術無し、術を用いる者は、乃ち拙と為す所以なり
真廉、正に清廉潔白な者;大功、偉大な巧者
承 意訳
真に清廉潔白な者は、清廉潔白であるという評判は立たない
評判が立つ者は、完全には清廉潔白とは言えず、その評判を貪るのみ
真に巧妙な術を持っている者は、やたらとその術を披露することはない
術を用いる者は、どこかに拙劣な部分が残っている者である
転 別視点
心理学の世界では、自分に自信がない人は、他人からの承認欲求が強いとされています。つまり、自分で自分のことを誉めることができないので、周囲から誉めてもらうことを強く要求するようなことです。
実際に清廉潔白な人は、誰かにそうだと言ってもらう必要はなく、自分の中で清廉潔白であることが完結します。しかしながら、自分の中で「これで清廉潔白なのだろうか」と若干の疑問が残っているときは、周囲から承認してもらはないと、心が落ち着きません。
何か術を極めた人も同様で、他人からの承認がないと、本当に極めた人以外は不安になります。
心理学の世界では、この不安は子供時代の親などからの対応による要素が強いとされています。逆に解釈すると、子供時代の育てられ方によっては達人になりにくい心理状態になってしまう可能性があります。
結 まとめ
真に道を極めた人は、それを表に出しません。中途半端に道を極めた人は、それを表に出して、周囲から承認されることを期待します。能ある鷹は爪を隠す、と近い意味です。