起 原文
福莫福於少事 過莫過於多心
唯苦事者 方知少事之為福
唯平心者 始知多心之為過
福(さいわい)は事少なきより福なるはなく、過(わざわい)は心多きより過なるはなし
ただ事に苦しむ者は、まさに事少なきの福たるを知る
ただ心を平らかにする者は、始めて心多きの過たるを知る
事少、何事もないこと、無事息災なこと;平心、平静にしていること
承 意訳
幸福とはいろいろありますが、何事もなく平穏無事なことほどの幸福はありません。禍(わざわい)にはいろいろありますが、心をいろいろなことに配慮して気があせることほどの禍はありません。
この道理を知る人は少なく、多事に苦しんで、始めて平穏無事が幸福であることに気づきます。
心穏やかに過ごすようになり、始めて方々に心配りすることの禍を自覚します。
転 別視点
この段落の2行目は「災い転じて福となす」という諺と同意になります。悪い状態を知って初めて良い状態への道筋が見えます。逆もまた然りで、同じ場所にいたのでは、その場所がどのような状態なのかを把握することが難しいです。
だからこそ、若くて取返しがきく時代には、いろいろな苦労をして生きることの幅を広げて、世の中が理解できたところで一番幸せな生き方をするということが落としどころなのだと理解しました。
結 まとめ
悪い状態を知って初めて良い状態への道筋が見えます。逆もまた然りです。心が平静な状態になって初めて、配慮する事項の多いことが禍であることに気づきます。