前集045 人の心の中:小さな過ちでも大きな過ちの元になる

前集041-060

起 原文

人人有個大慈悲 維摩屠劊無二心也
處處有種真趣味 金屋茅簷非両地也
只是欲蔽情封 當面錯過 使咫尺千里矣

人々個の大慈悲有り、維摩屠劊(ゆいまとかい)二心無し
処々種の真趣味有り、金屋茅簷(かなやぼうえん)両地に非ず
ただ是れ欲におおわれ、情に封ぜられ、当面に錯過せば、咫尺をして千里ならしむ

維摩(ゆいま)、学識にすぐれた在家信者、釈迦の弟子;屠劊(とかい)、屠は牛馬などを屠殺する者、劊(かい)は罪人の首を切ることを仕事とする人;金屋(かなや)、金壁で塗った立派な御殿;茅簷(ぼうえん)、茅葺の家で、粗末な住まい;錯過、錯は入り乱れること、過はあやまち;咫尺(しせき)、「咫」は中国のの制度で8寸、「尺」は10寸、非常に距離が近いこと

承 意訳

人は誰でも、一つの大慈悲の心を持っています。インドの大徳なる維摩居士でも、牛馬を屠殺したり、罪人の首切りを生業とする人でも、皆同じで心に二つはありません(全く同じです)。

人は誰でも、至るところに一種の真の趣味があります。金壁の立派な家でも、茅葺の質素な家であっても、趣味という点からは、いずれも趣があり両者に違いはありません。

ただ是は、貪欲な心に覆われたり、感情的になったりして、一度入り乱れてしまうと、ちょっとした間違いであっても、大きな間違いとなってしまいます。

転 別視点

人は元来慈悲深い心と趣深い美しさを兼ね備えているというまさに性善説を全面に押し出しています。

性善説を信じれる人は、心底性格の良い方だと私は思っています。そうでないと、信じることは難しいからです。

(国家と個人を連結することには無理がありますが)最近の中国の外交を見ていると中国人はなんとなく性格の悪い人が多いように想像してしまいます。でも古来より性善説を信じている人が中国にいた事実があり、それが今でも(中国でも少なからず)読み継がれていることはとても嬉しく感じました。

前集040と同じ要素も含みます。悪い習慣はすぐに身についてしまいます。悪い考えも、油断するとすぐに自分の心を支配してしまいます。

結 まとめ

貪欲な心や、感情的な心が、一度清く趣深い心に混入してしまうと、それがほんのちょっとした間違いであっても、大きな間違いとなってしまいます。

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