起 原文
富貴家宜寛厚 而反忌刻
是富貴而貧賤其行矣
如何能享
聰明人宜斂蔵 而反炫耀
是聰明而愚懵其病矣
如何不敗
富貴の家は宜しく寛厚なるべし、しかして反て忌刻なり
これ富貴にしてしかして其の行いを貧賤にするもの
如何ぞよく享けん
聡明の人は宜しく斂蔵なるべくして、しかも反て炫耀す
これ聡明にして其の病を愚懵にするもの
如何ぞ敗れざらむ
忌刻、妬みが深く、過酷で、無慈悲なこと;斂蔵(れんぞう)、才能を深くおさめ、しまい込むこと(披露しないこと);炫耀(げんよう)、輝かして人に見せびらかすこと;愚懵(ぐぼう)、愚かで道理に暗いこと。
承 意訳
富貴の家では、他人を遇するときに、寛大でかつ手厚くすべきなのに、実際は逆に猜疑心深く、無慈悲なことが多いです。
富貴でありながら、その行いは貧賤な者と同じやり方です。
どうして末永く福禄を享けて安泰ということがありましょうか。決してありません。
聡明で才智鋭敏な人は、その才能を深くおさめ蔵して外部に現さずに奥ゆかしい態度を持つべきなのに、周囲にその才能を見せびらかすことがあります。
いかにも聡明なように見えますが、彼らの心は愚人の病弊と同じです。
いつかは失敗に陥らざるを得ません。
転 別視点
立場立場に応じた行動をとるべきなのに、どうしてもケチだったり、人に才能を自慢したり、と卑下な行動をとってしまいます。
生まれながらにお金持ちの家庭の人は、他人にも寛大で接し方も高貴ですが、いわゆる成金に近い人は基本はケチです。なぜならばケチでなければ成金になれません。
同様にいわゆる天才肌の少しの努力で才能が開花したのではなく、途方もなく多くの時間を費やして才能を得た人は、努力したことをアピールしたくなる気持ちもなんとなく理解できます。
今の時代の就職面接では、自分をどのようにアピールするかが重要ですし、アメリカなどの西欧では自分に何ができるかをいかにアピールするかがポイントになります。
要は、必要なときにはアピールしますが、相手が不快になるようなアピールは不要ということなのでしょう。
結 まとめ
富めるときは周囲への恩恵を忘れません。慈悲深い対応をとりましょう。聡明な人は、その才能を周囲に自慢するような愚行はしません。