起 原文
居軒冕之中 不可無山林的氣味
處林泉之下 須要懐廊廟的經綸
軒冕の中に居ては、山林的の気味なかるべからず
林泉のもとにおりては、須らく廊廟的の経綸をおもうを要すべし
軒冕(けんべん)、軒は中国で大夫以上の身分のものが乗る車、冕は大夫以上のものがかぶる冠。つまり高位高官;林泉、庭園、田舎;廊廟(ろうびょう)、朝廷において政務を執る殿舎。廟堂。
承 意訳
国家の高位高官にいるものは、常に名利を捨てて山林に隠居する書士や隠者のような風流高潔な趣がなければなりません。
逆に、田舎や田園に隠れて、閑雲野鶴を友とする境遇にあるものでも、全く世の中と隔離され、国家社会はどうなってもよいという考えはよくないです。常に天下国家を治める大経綸を心に秘める見識は必要です。
転 別視点
大夫とは、中国では領地を持った貴族を示します。国においては大臣の補佐クラス、地方自治体ではトップくらいの官位のようです。洪自誠が目指して挫折したくらいの位置なのかと想像します(詳細は不明)。
私利私欲で動くことは言外ですが、全く世俗を離れてしまうのもどうかと思うよ、という内容です。良い意味では中庸を奨励しています。つかず離れずという立ち位置とも解釈できます。
結 まとめ
私利私欲にかまけやすい立場であっても風流高潔な趣が必要で、世俗と隔離した生活であっても国家を論じる見識は必要です。