起 原文
烈士譲千乗 貪夫爭一文
人品星淵也 而好名 不殊好利
天子営家国 乞人号饔飧
位分霄壤也 而焦思 何異焦聲
烈士は千乗を譲り、貪夫は一文を争ふ
人品は星淵なり、而も名を好むは、利を好むに殊ならず
天子は家国を営み、乞人は饔飧を号ぶ
位分は霄壤なり、而も思いを焦すは、何ぞ声を焦すに異ならん
千乗(せんじょう)、千両の戦車を持つ国;星淵(せいえん)、天と地くらいの違い、「淵」は底が深く水がよどんでいる所;殊(こと)なる、異なる;乞人(きつじん)、物乞いする人;饔飧(ようそん)、粗末な食べ物;霄壤(しょうじょう)、空と土壌、天と地
承 意訳
節義の固い人は国を得られるとしてもそれを他人に譲り、貧乏人は一円を失うまいと争います
品格は天地の差がありますが、名声を好むのか、実利を好むのか、であって、自分の拘りを持つことには相違がありません
天子は国家を営み、物乞いは食事のために叫びます
地位は天地の差がありますが、頭を悩ませているという状況に差はありません
転 別視点
2つの解釈があります
①名声であっても、実利であっても、拘りを持っている時点で悩みがあり、国家でも食事でも同じです。拘りや執着を持たないようにすることが幸せになる秘訣
②声と実利は同じ、国家と食事は同じ、って、本当に思っていますか?ちゃんと自分の価値観を持ちましょう
洪自誠さんは、これを書いていた時期は職に恵まれていなかったこともあり、名声を得ている人に対して、悪い感情を持っていたのかもしれません。そうなると①の解釈が正しいのかもしれません。
結 まとめ
正しいことであっても、拘りや執着を持たないようにすることが幸せにつながります