起 原文
春日氣象繁華 令人心神駘蕩
不若秋日雲白風清 蘭芳桂馥 水天一色 上下空明 使人神骨倶清也
春日は気象繁華なり、人をして心神駘蕩ならしむ
秋日は雲白く、風清し、蘭芳しく桂馥い、水天一色、上下空明にして、人をして神骨倶に清らかならしむに若かず
駘蕩(たいとう)、ゆったりとする、とろりとする;蘭(らん)、ラン;上下空明(じょうげくうめい)、「上」は天、「下」は水、空明は月影が水面にあること
承 意訳
春の日は、天気ははなやかで、人の心をゆったりとさせてくれます
秋の日は、雲は白く、風は清らかで、ランは芳しく、カツラは香豊か、水と空は青一色となり、月影は空と水面に現れ、人の心ばかりか骨までを完全に清らかにしてくれます
春の日は、秋の日の素晴らしさには及びません
転 別視点
菜根譚の多くに段落は、整った形式、文字数で表現されています。
ところがこの段落では、春に関しては12文字、秋に関しては27文字で表現されています。
春は12文字で表現できますが、秋の清らかさは27文字必要で、それだけ(27/12倍も!)素晴らしいと感じているからなのだと考えられます。
結 まとめ
春の陽気は楽しいけれども、秋の気配は何事にも代えがたい清らかさがあり、十分に満喫したいものです