起 原文
色慾火熾 而一念及病時 便興似寒灰
名利飴甘 而一想到死地 便味如嚼蝋
故人常憂死慮病 亦可消幻業而長道心
色慾火のごとく熾んなるも、而も一念病時に及べば、便ち興寒灰に似たり
名利飴のごとく甘きも、而も一想死地に到らば、便ち味い嚼蝋の如し
故に、人、常に死を憂ひ、病を慮らば、亦幻業を消して、道心を長ずべし
熾(さか)ん、盛ん;幻業(げんぎょう)、色欲や名利のような幻を追い求めること
承 意訳
色欲は火のように燃え盛るが、病気のことを思い浮かべれば一気に消えて灰のようになる
名利は飴のように甘いが、死ぬときを思い浮かべればロウを噛むような味気ないものになる
だからこそ、人間は、常に死ぬときや病気のことを思い浮かべれば、色欲は名利のような幻に囚われることなく、道徳心に沿った生き方ができるようになる
転 別視点
色欲や名利は結局は自己満足の要素が強く、周囲にひずみを及ぼすことが多い。そのために病気になったときに冷たい仕打ちを受けたり、死ぬときになってもう少し穏やかな生き方をしていればと後悔するのではないか。
なるほど!、と膝を打ちました。
一生懸命と目標に向かう姿勢を否定しているのではなく、色欲に走り過ぎず、名利にもこだわり過ぎず、という中庸を勧めている。
結 まとめ
色欲に走り過ぎず、名利にもこだわり過ぎず、という中庸を歩むには、病気のときや死ぬときをときどき想像すると良い。