起 原文
渉世淺 點染亦淺 歴事深 機械亦深
故君子與其練達 不若朴魯
與其曲謹 不若疎狂
世を渉ること浅ければ、点染もまた浅くし。事を歴ること深ければ、機械もまた深し。
故に君子はその練達ならんよりは朴魯なるにしかず。
その曲謹ならんよりは、疎狂なるにしかず。
機械、からくり;曲謹、丁寧で遠慮深いこと;疎狂、世辞に疎くて常軌を逸していること.
承 意訳
人生経験が浅く若輩である間は、悪習に染まったとしてもその悪さの程度は軽く、かえって無邪気な部分もあります。しかしながら、経験豊かな年配者は、いろいろな物事を如才なく器用にこなしますが、悪事を働いた際は奥が深いです。
そうなると世の中の指導者は熟練して抜け目がないよりも、素朴で馬鹿正直な人物の方が良いかもしれません。
物事に丁寧で無口な人より、あっさりとして思ったことをすぐに口に出してしまうような人物の方が“まし”でしょう。
転 別視点
沈黙は金と言いますが、これは自分の意見を“ありのままに”述べるといろいろと支障を生じることを示します。
著者の洪自誠はとても思慮深い人物と想像されますので、思慮深い人物が師事する人物は「思慮深い人物」よりは「飾らない人物」の方がバランスが良い、という要素も考慮されるべきかもしれません。
結 まとめ
年齢を重ねてからの悪だくみは見苦しく最悪です。また、指導者として誰かに師事する際は、「世渡り上手」よりも「純粋で裏表のない人物」の方が良いという意見には、私自身は賛同です。