起 原文
標節義者 必以節義受謗 榜道學者 常因道學招尤
故君子不近悪事 亦不立善名 只渾然和氣 纔是居身之珍
節義を標する者は、必ず節義をもって謗を受け、道学を榜する者は、常に道学に因って尤を招く
故に君子は、悪事に近づかず、また善名を立てず、只渾然たる和気
纔かに是れ身を居くの珍なり
節義(せつぎ)、節操と道義。人としての正しい道を踏み行うこと;謗、そしり;道学(どうがく)、道徳を説く学問;尤、とがめ;渾然(こんぜん)、様々なものが溶け合っているさま;珍、容易く得難い
承 意訳
節義を自分のセールスポイントととしてアピールすれば、必ず節義のために謗りを受けます
道学を標榜する者は、必ず道学のためにとがめを受けます
ゆえに君子たるものは、悪いことには近寄らず、良い人という評判も立てず、なんとなくの穏やかな雰囲気で周囲を和ませる
この姿勢が、得難くかつ大切な生き方です
転 別視点
良いことであっても、それを重要視し過ぎて周囲にアピールすれば、それのために足をすくわれます
自分の信念にするのは良いが、周囲を巻き込むなど過度にこだわればうまく行きません
「秘すれば花、秘さざらば花ならず」という世阿弥の言葉があります。全てを前面に押し出すのではなく、相手が自発的に気づくように「ほのめかす」程度に留めることも大切かもしれません。
結 まとめ
節義も、道学も、前面にアピールすることは控えましょう。信念を持つことは重要ですが、やり過ぎは相手を頑なにし、足元をすくわれます。