起 原文
前人云 抛却自家無盡藏 沿門持鉢効貧児
又云 暴冨貧児休説夢 誰家竃裡火無烟
一箴自眛所有 一箴自誇所有
可為學問切戒
前人云う「自家の無尽蔵を抛却して、門に沿い鉢を持して貧児に効う」と
また云う「暴富の貧児、夢を説くことを休めよ、誰が家の竃裡か火に烟無からん」と
一は、自らの所有に昧きを箴め、一は、自ら所有に誇ることを箴(いまし)む
学問の切戒と為すべし
竃裡(そうり)、かまど;烟(けむり)、煙;昧(くら)い、ほの暗い;箴め、戒め
承 意訳
昔の偉大な人は言う「自分の家にある豊富な財産に気づかずに、門に並んで物乞いをするようなものだ」と
またこのようにも言う「富を得た成金は、夢を説くのをやめましょう。その夢は既にどこにでもある状態です」と
前段は、自分の心の財産に気づかないことを戒め、後段は、自分の豊かさを自慢することを戒めています
学問を志すときの大切な戒めとするべきです
転 別視点
「自分にはこれと言った長所がないから・・・」という人がいます。でもそれは自分の長所に気づいていない、という実例は現代でも多数存在します。自分の長所に気づくのは簡単でないこともありますが、「ない」と断定することは良くありません。
逆に「自分でこんなこともできるだよ!」と自慢げに語る人がいます。でもそれは周囲の人にとっては、当たり前にできるということも珍しいわけでありません。コミュニケーションは重要ですが、自分勝手に「マウントを取る」ことは避けたいですね。
「マウントを取る」、自分の優位性を相手や周囲に示す行為。マウントとは、格闘技において相手に馬乗り状態になる「マウントポジション」に由来します。これは、上にまたがった人が一方的に攻撃できる状態です。
結 まとめ
自分の心の財産には注意を払い気づかないことのないようにする。逆に、自分の豊かさを周囲に対して自慢することはダメです。