起 原文
一燈螢然 萬籟無聲
此吾人初入宴寂時也
暁夢初醒 群動未起
此吾人初出混沌處也
乗此而一念廻光 烱然返照
始知耳目口鼻皆桎梏 而情欲嗜好悉機械矣
一燈蛍然として 万籟声無し
此れ吾人初めて宴寂に入るの時なり
暁夢初めて醒め 群動未だ起らず
此れ吾人初めて混沌を出ずるの処なり
此れに乗じて一念の光を廻らし 烱然として返照せば
始めて耳目口鼻 皆桎梏にして 情欲嗜好は悉く機械なることを知る
一燈蛍然(いっとうけいぜん)、わずかに残っている光が蛍の光のような状態、夜が更けて明かりがなくなるような状態;万籟(ばんらい)、すべての物音;宴寂(えんせき)、宴は安らかに、寂は悟りの境地。安らかに悟りの境地に入ること;暁夢(ぎょうむ)、夜明け方に見る夢;群動(ぐんどう)、大勢の群集、軍勢などがいっしょに動くこと;烱然(けいぜん)、光り輝くさま;返照(へんしょう)、自分の本源を究明すること;桎梏(しつこく)、手かせ足かせ
承 意訳
夜が更けて僅かな光が残っているとき、全ての物音が消えます
ここで初めて、私たちは静かに悟りの境地に入ることができます
夜が明けることになっても、群衆の動きはありません
このとき初めて私は混沌を脱することができます
これを機会に一筋の光で心を照らし、自分の本源を究明すれば
耳、眼、口、鼻という感覚器官が全て手かせ足かせであり、情欲や嗜好は完全に思考を妨げるものであることがわかります
転 別視点
静かな夜に一人で自分の心と向き合えば、自分の心の本心が見えてきます。いろいろな情報は結局迷いを生むことになり、心の自由を奪います。
一人静かに、全ての情報から遠ざかり、自分の心と向き合う時間を作り、自分はどのように生きるべきなのかを考えることが必要です。そうでないと、惰性で時間が流れてしまい、一度切りの人生が無意味なものになってしまいます。
結 まとめ
静かな夜に一人で自分の心と向き合えば、自分の心の本心が見えてきます。そんな時間を時々確保することが必要です。