起 原文
居逆境中 周身皆鍼砭薬石 砥節礪行而不覺
處順境内 滿前盡兵刄戈矛 銷膏靡骨而不知
逆境の中に居れば、周身皆鍼砭薬石、節を砥ぎ行いを磨いて覚えず
順境の内に処れば、満前悉く兵刄戈矛、膏を銷し骨を靡して知らず
鍼砭薬石(しんべんやくせき)、金属の針や石の針(病気を治す道具)と薬と石(温めて懐にいれて、病を治すもの)のこと;兵刄戈矛(へいじんかぼう)、兵が軍隊、戈が武器、つまり軍隊の刀、武器の矛;銷(せう)、とかす;靡(び)して、なびかす
承 意訳
逆境にいるときは、自分の周囲は皆、金の針、石の針(病気を治す道具)、薬や温めた石のように、知らず知らずのうちに、自分を鍛え、精神を養う経験となります
自分にとって都合の良い環境は、自分にとっては仇となるものばかりで、骨と肉を無茶苦茶にしてしまうものです。しかも、なかなかそのことには気づきません
逆境は人間を育て、順境は人間をダメにするということです。
転 別視点
宇宙を旅した宇宙飛行士の筋肉は、無重力の空間での時間が長く、筋肉に負荷がかからないので、筋肉の退化が著しいと言います。同じく、重力の負荷がなくなった状態が長いと、骨密度は極端に下がります。
人間の本質も同じで、心に負荷のない状態が続くと、心の耐性がなくなり、弱い心になります。逆境は強い心を育てます。
本当の指導者は、弟子を辛い環境に追い込むと言われています。ライオンも、我が子を千尋の谷に突き落とすと言われています。
自分が当事者の場合は、逆境にあるときは「自分は成長している!」を前向きに考えることができます。
結 まとめ
逆境は人間を育て、順境は人間をダメにします。人を指導するときは、逆境の利点も考慮すべきなのかもしれません。