前集140 奸悪を退治する際は、逃げ道を一本残すようにする

前集121-140

起 原文

鋤奸杜倖 要放他一条去路
若使之一無所容 譬如塞鼠穴者
一切去路都塞盡 則一切好物倶咬破矣

奸を鋤き、倖を杜ぐには、他の一条の去路を放たんことを要す
若し之をして一も容るる所無からしめば、譬えば鼠穴を塞ぐが者の如し
一切の去路、都て塞ぎ尽くせば、則ち一切の好物は倶に咬み破らる

鋤く(しく)、土を浅く掘り起こす、根こそぎにする;倖、へるらう者;杜ぐ(ふさぐ)、閉じる。ふたをする

承 意訳

奸悪を根こそぎにし、諂う者を遮断するには、一本の退路(逃げ道)を残しておく必要があります

もしも一つも残していないとすれば、例えばネズミの穴を塞ぐようなものです

一切の退路を完全に塞いでしまったならば、本当に大切なものまで嚙みちぎられてしまいます

転 別視点

退路を断たれれば、必死になるという生き物の本質を表現しています。追い込む側としては、相手に”急場の底力”を発揮しないでほしいので、逃げ場を作るようにします。

同類の意味の諺に「窮鼠ネコを噛む」があります。この諺の起源は「塩鉄論」で前漢時代(紀元前81年)の桓寛が編著とされています。時代はかなり古く洪自誠さんは、この諺を知ったうえで、この段落を書いていると思われます。

逆に追い込まれると底力が発揮できるという見方もできます。「背水の陣」が前向きな解釈の一つで、劉邦の部下の韓信が川を背に陣地を敷き、兵士が逃げ場がないために必死に戦ったために勝利したという話です。このエピソードは紀元前204年で、生き物の本質は、2000年以上前からあまり変化がないのかもしれません。

結 まとめ

悪を退治するに当たっては、退路を一本残しておきます。そうでないと、窮鼠がネコを噛むように思わぬ反撃にあいます。

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